アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

2019-01-01から1年間の記事一覧

わが草木とならん日にたれかは知らむ敗亡の歴史を墓に刻むべき。われは飢ゑたりとこしへに過失を人も許せかし。過失を父も許せかし。 萩原朔太郎「父の墓に詣でて」 私の生涯は過失であつた、と晩年の萩原朔太郎は書いている。また別の散文詩で「父と子共」…

鶏頭、鶏頭、俺はもう気が狂ひさうだ。という文章が北原白秋の歌集『桐の花』の中の散文「ふさぎの虫」に出てくる。これは白秋が人妻との姦通罪で拘置所にぶち込まれて世間的な評判も失墜してやぶれかぶれになっている頃に書かれた文章で、暑い夏の日に縁側…

Apple Musicは楽しい。最近は夏なのでディック・デイルとかキング・タビーとかを聴いているのとあとはマック・デマルコの『2』をヘビロテしている。マック・デマルコのギターのトーンに病みつきで、あのへろへろのチューニング、安いアンプから鳴っている感…

この世からいちばん小さくなる形選んで眠る猫とわたくし 蒼井杏『瀬戸際レモン』「多肉少女と雨」 1K六畳のワンルームマンションに住んでいる。場所をとらないで生きている、と思う。電車でも縮こまって座る。喫茶店に入っても隅っこの席を選んで座る。肩ら…

コンビニで発泡酒を買うためだけに家を出て、自転車が多い割に狭い歩道を、引越したての頃は落ち着かなかったがもう大して危機感を抱くこともなく歩いた。予定通りコンビニで発泡酒だけを買った。こういうとき他の商品は一切見ない。コンビニの棚をじろじろ…

昨日から珍しく土日が休みだったが、二日間休みがあることをすでに二連休と呼ぶようになっているくらいシフト制の勤務形態に頭が支配されてきている。シフト制で働いているとシフト制なりの時間感覚が身についてくる。三日行ったら一日休みがあるというのは…

大森静佳の『カミーユ』を買った。少しずつ読んで、あまりの良さにくらくらして、これは体調がいい時に、十全に味わいつくせる状態で余すところなく読みたいと思っていて、なかなか進まない。タイトルになっているカミーユという名前には、二人の女性の影が…

のがれがたい死というものを、どのように自分が膚でつかむか、といってもたいがい忘れているが、それでいて現世の肉体の甘美さというものを、どうしていっしょに考えるか。このことは、なるべく心の中で整理し、全身でわかりたいと思っている。 — 小島信夫『…

反復

昨日自分が書いたことにそそのかされてずっと前に京都の古本屋で買って以来しまいっぱなしになっていたドゥルーズの『差異と反復』を引っ張り出して読んできた。一緒に読み直そうと思ってキルケゴールの『反復』も引越しのために詰めてそのままになっていた…

今が寒さのピークだと言われている。立春を過ぎるころからゆっくりと春に向かっていくのだと言われている。日差しの中にも確かさが戻ってきた。そのことをうれしく思う。 今年の冬はとても寒くて長いからおばあさんが編んでくれたセーターを着なくちゃ、とブ…

たたみかた 2

誰かとぶつかり合うような意見を持つのではなく、しかし何にでも尻尾を振って加担するのでもなく、他者との対話に向かって開かれている問いを自分の中にいつも持つこと。それがぼくのやりたいことかもしれないと思った。 知らない人が多くいる場所に出向くと…

たたみかた

今日はお休み。来月から休みを増やすことにした。派遣社員という立場はそのへんの融通がきく。会社からの諸々の保証がないのだから、こちらから会社への責任も軽い、ということだろうか。四月までのロスタイムを本を読んだりして過ごしたい。 休みの日には本…

めめんともり?

よく生老病死のことを考える。この世の四苦八苦のことを考える。それは伊藤比呂美の最近の著作をいくつか読んでいたからかもしれないし、昭和一桁生まれのご老体を日常的に目にする職場で働いているかもしれない。気がついたらフリオ・リャマサーレスの『黄…