アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

川上未映子『わたくし率 イン歯ー、または世界』 「私」の問題

わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) 作者: 川上未映子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/07/15 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 27回 この商品を含むブログ (41件) を見る 人は、自分以外の誰かになることはできない。言い換えると、私…

現代短歌の可能性

僕たちはいつだって、「いま・ここ・わたし」を生きるしかない。 そして時々、僕たちの「いま・ここ・わたし」は頼りない。今ここにあるすべてでは、どうやって生きていけばいいのかわからなくなる時がある。 そんなとき、たった一つでも、ささやかでも、あ…

天才と悪魔 <快ー不快>という尺度

Robert Johnson- Crossroad ロバートジョンソンという伝説のブルースマンがいる。ローリングストーンズだとか、その後のたくさんの音楽に影響を与えた。僕にはイマイチぴんとこないが、ポップソングの祖だなんてことも囁かれている。 彼には一つ、おもしろい…

「意味がない」ということについて

なにかの意味を実感するためには、信じることがその前提にある。 意味の背後の価値、及びそれを形作るところの価値観を、全面的に受け入れて肯定し信じることができなければ、何事も意味を為さない。 神様を信じない人にとっては、祈りなんて無意味だし、ロ…

読書の楽しみ

たまに、たくさん本を読んでいてすごいね、とかえらいね、とか言われることがある。 褒められるともちろんうれしいけれど、別に褒められたくて読んでいるわけではない。ただ楽しいから読んでいるのだ。僕は本を読むのは楽しいことだと思うけれど、そう思わな…

”ジャズな書き方”試論

壊してね 壊してね こうやって作るんよ 壊してね 壊してね こうやって作るんよ せやけどね 戻らんよ 壊したもんは戻らんよ 別物や 別物や 全くもっての別物や ミドリ (Midori) - ちはるの恋 ジャズには、テーマと呼ばれるメロディがあって、決められたコード…

ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』 あの日から僕らが考えている「豊かさ」について

アメリカ合衆国。USA。日本に住む僕らからしたら、まったくのよその国のはずなのに、僕らはみんなアメリカの大統領の名前をフルネームで言える。誰もがアメリカ製のピカピカした映画を観たことがある。ジーンズを履いたことがある。人によっては、ニューヨー…

坂口安吾『恋をしに行く(「女体」につづく)』 「恋愛とは性欲の詩的表現にほかならない」のか?

まずタイトルが、洒落ている。ちょっとそこまで買い物に行ってくるよ、とでも言う風に、「恋をしに行く」。ふしだらな男女の小説を書いてばかりいる安吾が言うと、不思議に格好良く、説得力があって、しびれる。 実際、そんなものなのかもしれない。堀江敏幸…

太宰治『富嶽百景』 ぼくのかんがえるさいきょうの作家

作家と作品の関係は、しばしば論争の対象となる。作品と作家の私生活とは関係がないという人もいるが、批評では作品と作家の生い立ち、環境、日記などを照らし合わせて作品を分析する、という方法がよく行われている。 中でもとりわけ作品が、作者の生活や人…

本谷有希子『生きてるだけで、愛。』 純文学は今どこにあるのか。

文学とは、生きることだ。純文学とは、その国で、その時代で、その人が生きていくための言葉なのだ。生きとし生けるものの、よろこびだ。生まれ出づるものへの手紙だ。 朝、目が覚めて、静かな気持ちで君を想うということ。さみしさや、焦燥感にやられて、騒…