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狂気のアメリカン・パイ全作品レビュー

・まえがき
 アメリカの青春コメディ映画の金字塔、『アメリカン・パイ』シリーズ全作品の感想です。有名なシリーズですが、全作品を通して観たことがある人は、意外と少ないのではないでしょうか。先日友人とアメリカン・パイシリーズ全作品を語り合う会を開催するため、8作品を一気に駆け抜けたので記念にレビューを残しておきます。ストーリーのネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。
 ちなみに、アメリカン・パイパイなど、いわゆるパチモンも多い本シリーズですが、4作品あるスピンオフも含めて、正式シリーズは以下の8本になります。2020年に製作されていますが、2012年の『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』が完結編とされているため、今回は取り上げません。

・『アメリカン・パイ』シリーズ全作品一覧
アメリカン・パイ』American Pie(1999)
アメリカン・サマー・ストーリー』 American Pie 2 (2001)
アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦』 American Wedding (2003)
アメリカン・パイ in バンド合宿』 American Pie Presents: Band Camp (2005)
アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会』 American Pie Presents: The Naked Mile (2006)
アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業』American Pie Presents: Beta House (2007)
アメリカン・パイ in ハレンチ教科書』American Pie Presents: The Book Of Love (2009)
アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』American Reunion (2012)

・『アメリカン・パイ』American Pie(1999)
 監督:ポール・ワイツ 脚本:アダム・ハーツ
  アメリカン・パイシリーズの記念すべき第一作。友達とアメリカンパイ全作品について語り合う会をする約束をしたので約10年ぶりに再鑑賞。高校卒業までに童貞を卒業する協定を交わして奮闘する男たち。男だけでつるんで、下ネタで大はしゃぎする、ホモソーシャル全開のノリが高校時代を思い出す。セックスのことしか頭になく、それ以外のすべてが見えなくなっていた状態から、ちょっとした失敗や大失敗を繰り返しながら、相手を思いやり、愛することを知っていく。それぞれのキャラクターが個性豊かで、みんな違ったやり方で自分を見つけていくのが良い。
プロムの夜の特別な輝きになんだか涙ぐんでしまう。アメリカの青春映画は沢山あるけれど、これだけ正面切って、プロムパーティを最高に特別な夜として描いた作品はないんじゃないだろうか。バカばっかりしていた高校生活の終わりに、見失いかけていた友情や、本当に大切なことに気づいて、それぞれの新たな一歩に対して乾杯をする。男の子たちも女の子たちもみんな素敵で愛らしい。やることなすことド派手に失敗する主人公ジム、一人だけ彼女持ちだが最後の一歩を踏み出せないケヴィン、アメフト部に所属するオズの正統派誠実イケメンっぷりも眩しいし、フィンチの低い声や飄々とした佇まい、とろんとした目元がセクシー。シリーズ通して物語を大きく動かしていく屈指のトラブルメーカー、スティフラーの存在も欠かせない。あと楽しそうにバンド合宿の話をするミシェルや、達観したアドバイスをくれるジェシカが好き。シャーミネーターのドヤ顔もキュート。
アメリカン・パイの使い方のことをすっかり忘れていて改めて衝撃を受けた。童貞の想像力は世界を塗り替えてしまうほどの凄みがある。あとお父さんのキャラが良い。自分のお父さんだったら多分嫌だけど、良いお父さんだなって思う。お父さんの息子への理解、優しさの示し方が不器用で空回りしてるのが血の繋がりを感じさせて良い。

・『アメリカン・サマー・ストーリー』 American Pie 2 (2001)
 監督:ジェームズ・B・ロジャーズ 脚本:アダム・ハーツ
  前作から一年後、大学生になった彼らが、夏休みに高校時代の仲間と海沿いの別荘を借り、パーティを開いて最高の思い出を作ろうとする。フィンチの相変わらずの、と言うよりもっとパワーアップした飄々とした佇まいと眠そうな目元が好き。元カノのことが忘れられないケヴィンの、「友達でも、君がいない人生よりはマシだ」という台詞が泣ける。前作でも共感性羞恥を掻き立てて止まなかったジムは相変わらず桁違いの大恥をかいている。ずっとバンドキャンプの話をし続けるミシェルを変人扱いしていたが、彼女が楽しそうに思い出を語る意味に、はたと気づくシーン、憧れの人と離れ離れになっていた一年間を語ろうとすると、ミシェルのことばかりが出てくる、楽しかった時間にはいつもミシェルがいる、その気づき方がめちゃくちゃ良い。SUM41の"In Too Deep"が流れるシーンで泣いちゃう。楽しそうに自分の話をしてくれる女の子を見ると好きになってしまう。お茶目なミシェルが一番好き。
あと前作から結構ツボだったシャーミネーターがウケててよかった。シャーマンめちゃくちゃ面白い。
 大学に入ったばかりの彼らにはやりたいこと叶えたいことがいっぱいあってそれが眩しい。彼らは実際に未来を体現していて、いつか大人になって、そんなものは初めから存在しなかったのだと気づくその日まで、未来は未来形で存在し続ける。そんなことを思った。
 お色気コメディでありながら、気取らない純粋な恋愛、友情、親子愛をさらっと描いていて油断していると涙腺にくる良作。

・『アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦』 American Wedding (2003)
 監督:ジェシー・ディラン 脚本:アダム・ハーツ
 童貞を捨てることに躍起になっていてジムたちが大学を卒業し、今回はとうとう結婚式を挙げるのが感慨深い。なにかとトラブルに見舞われ、人一倍大恥をかいてきたジムの一生に一度の大舞台となれば、波乱が起きないわけがない。シリーズを通して屈指の性獣、物語の起爆剤、スティフラーが今回は良い意味でも悪い意味でも大活躍!劇場版ジャイアンみたいになってて笑った。ゲイバーでのダンスバトルシーンはヒット曲のクラブアレンジも楽しいし、リバティーンズが流れるシーンが良かった。デリカシーがなく場を弁えないスティフラーの傍若無人な振る舞いは、皆から疎まれながらも、彼らのプロムが忘れられない夜になったのも、女の子たちと出会ったのも、海辺のパーティを大成功に導いたのも、そしてフィンチのキャラを立てたのも、スティフラーが一役買っている。彼の底のない突飛な行動力によって、良くも悪くも忘れ難い思い出が沢山できた。とはいえやっぱり一緒にいたくない。今作では彼の生半可ではない気合を見せつけるシーンがいっぱいあり、主役であるはずのジムをすっかり食ってしまっている感すらある。
 ジムが披露宴でダンスを披露するシーンで、1で見せたあの奇天烈なダンスを再び見られるかと思いきや器用にこなしていてびっくり。3ともなると、みんな10代のバカな若者じゃなくなって、落ち着きを持った大人になってくる。彼らが集まってしゃべる場所も小洒落たバーになっている。飲むお酒も風俗嬢を呼んで騒ぐのも金がかかっている。ケヴィンなんて1Dにいそうな風貌になっている。フィンチだけ回を重ねるごとにやたら尖っていくのが面白い。オズの不在にまったく触れられていないのが悲しい。今回スティフラーが物語の中心に置かれたのは、彼ぐらいしか無茶をしてはしゃいで物語を回すことができる人物がいなかったからなんじゃないかと思うと少し寂しい。
ジムが結婚するとなると気になるのが、今まで頼んでもないのに要らんことをいっぱい教えてくれたお父さんと、結婚にあたって何を話すのか、という点だが、父子の交流が今回はいっぱい描かれていて満足感があった。
 なんだかんだで一番ぶっ飛んでいるのはミッシェルな気がする。彼女と一緒にいたら毎日楽しいだろうな。スティフラーとフィンチの、mother fucker,grand-mother fuckerとなじりあうやり取りが良い。

・『アメリカン・パイ in バンド合宿』 American Pie Presents: Band Camp (2005)
 監督:スティーヴ・ラッシュ 脚本:ブラッド・リドル
 スティフラーの弟を主人公にしたスピンオフ作品。破天荒な兄貴に憧れ、悪戯三昧の悪ガキっぷりを遺憾無く発揮している。本当の兄弟かと思うほど顔つきが似ている。表情の使い方が完全にスティフラーのそれ。
 ひょんなことから吹奏楽部のバンドキャンプを共にすることになったスティフラーが、最初はダサいギーク達だと軽蔑しながらも、最終日の学校対抗の大会に向けて、なんやかんや交流していく話。弟が兄と決定的に違う点は、弟は兄のように奔放に振る舞おうとしている節があり、行動の数々に兄のようになりたいという願望が見え隠れして、つまりスティフラーらしく振る舞うことに執心しているように見える。現に学校の生徒や、周りの大人達から彼は「スティフラーの弟」と眼差されている。吹奏楽部のオタク達、そして疎遠になっていた幼馴染のエリスだけが、彼の度を越えた悪戯を疎いながらも、彼をマットとして、ひとりの個人として見ている。彼の悪名高い家名ではなく、彼の為すことによって彼を見ている。彼の短気な性格が起こしたトラブルによって損害を被れば彼を責めるし、彼の意外な特技によってその埋め合わせをしたら彼を許す。彼の行動の過激さを目当てに寄ってきていた従来の悪友たちよりも、彼を彼自身として認め、歩み寄ろうとしてくれるブラスバンドの仲間たちを選び、彼らしい豪快なサプライズをキメる展開がアツい。ブラスバンドのみんな懐深すぎやろ。
ラジコン式のアーム付きロボットを自作する科学オタクのサックス吹きの少年のキャラが良い。最初にマットに歩み寄ろうとしたのも彼だし。
 あんなに強烈な兄がいたら良くも悪くも影響受けてただろうな。兄の影を追う弟が自分を見つけていく映画だとも言える。

 盗撮はライン越えだろ!!と思ったが一作目ですでにネット配信をしていた。オーボエもアップルパイよりはマシだし。

 本シリーズからは、ジムのお父さんとシャーミネーターが出ている!シャーミネーター好きなので嬉しかった。遺憾なくそのシャーミネーターっぷりを発揮していた。

 本家シリーズと比べるとエロもバカも控えめに思えた。立て続けに観ていて慣れただけかな?とはいえスピンオフ作品でここまで初出のキャラクター達に愛着を持たせるのはすごい。

・『アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会』 American Pie Presents: The Naked Mile (2006)
 監督:ジョー・ナスバウム 脚本:エリック・リンジー
 アメリカン・パイシリーズのスピンオフ第二弾。今回はスティフラー家でありながら童貞の高校三年生のエリックが主人公。2年付き合っている彼女がいるが、心の準備ができないと言われ悶々としている。そんな時悪友達に誘われ、テスト期間後の大学のキャンパスで開催される、全裸マラソン大会に参加することに!というストーリー。
シリーズ恒例の自慰行為が親に見つかるシーンで始まるが、今度は両親だけでなく祖母も加わり、さらに祖母はそのショックが元で死んでしまうし、それもあっさり流される。オープニングだけでこれから始まるのがどういう映画なのか、一発で理解させる導入だった。
 今回はおふざけに定評のあるシリーズの中でも群を抜いたお祭り騒ぎが見られる。屈指のハイテンションっぷり。突然始まり、エロくもないし笑える要素もなく尺が長いアメフトの試合は、アメリカン・パイを観る者の期待に全くそぐわないシーンだが、大学に遊びに行ってハメを外す主人公達を期待する者にこの苦行のような時間を味わわせることで、ずっと恋人にお預けを食らっているエリックの気持ちが追体験できる仕組みになっている。嘘やけど。
 従兄弟のスティフラーが本物のパーティ・ピーポーで、彼が行く先々がお祭り騒ぎになる。スティフラー家で唯一の純粋な人気者。回を重ねるごとにスティフラー一族とジムのパパの存在感が増していく。お待ちかねの全裸マラソンの後、そのまま下着ダンスパーティーに移行するのガチで陽キャ過ぎる。世界で一番陽気やろ。全員テンション高過ぎて観ていて熱出そうになった。
 愛とセックスは別物か?という問いが今作では提示されるが、安心で安全なアメリカンパイシリーズなのでNTR要素はなくほっこりできる。結局みんないい感じに幸せになるからこのシリーズは良い。トレイシーめっちゃ可愛い。乗馬のシーンは伏線のようでいて、白馬は全く脈絡がなく、エリックが下痢しがちであるという設定も気がついたら吹き飛んでいる。携帯電話を失くしてるのに気にするそぶりも見せない。そういった細かな整合性などもろともせずに、勢いだけで突っ走っていくあたま空っぽムービーで楽しかった。

・『アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業』American Pie Presents: Beta House (2007)
 監督:アンドリュー・ウォーラー 脚本:エリック・リンジー
 前作に引き続きエリックが主人公で、脚本にエリック・リンジーが続投されている。彼の描くストーリーのテンションの高さは頭一つ抜けている。前作で純愛を貫いた彼女がイケメンに寝取られた設定で落ち込んだ。前作からそうだったけど今回エリックの影が薄過ぎる。居た?従兄弟のスティフラーはクラブを盛り上げるし面倒見が良いし、身をもって仲間とクラブの伝統を守ろうとする。ゴッドファーザーみたいだった。
 大学に入ったエリックが従兄弟のスティフラーがいる友愛会の入団試験を受けるところから始まる。クラブに入会するための50の試験がこれまで以上にホモソーシャル全開でちょっときつかった。こういう他人への迷惑を省みず排他的なやり方で男同士の絆を深め合うやつ好きじゃない。
 校内では、主人公たちパーティ・ピーポーが所属するベータと、将来を約束された御曹司のオタクたちが集まるイプシロン(通称ギークハウス)が対立している。性の乱れを懸念したギークが、ベータを潰しにかかろうとすることにより両者の対立が激化し、あまりの過激さに40年前に禁止されたギリシャ・オリンピックで決着を着けることになる。
 ヒロインとの初デートで行く、ハンマーで蟹の甲羅を割って殻を散らかしながら食べるレストランが豪快で楽しそう。
 後半のギリシャ・オリンピックがアホらし過ぎて良い。こういう因縁のガチンコバトルみたいな展開は素直に燃える。少年漫画みたい。パルクールの達人のギークの無駄に華麗なアクロバットの数々が良い。そのあと急に唐突なディアハンターのパロディが始まって笑った。ペロポネソスの戦い(55リットルのビール早飲み競争)では、サム・ライミのホラー映画よりも吐いている。サム・ライミよりも口から液体出す映画初めて観た。ギーク達による最大効率の吸収も面白いし、ジェフリーのバルブ全開が格好良過ぎる。中忍試験のロックリーかと思った。
シリーズの中でおそらく一番露骨なエロが多い。大学寮の男女共用のシャワールームとか、ブラ外し大会とか、ガチでハレンチだった。大学行ったらこんな感じなんだ…と思い、薔薇色のキャンパスライフへの憧れが募った。もう大学出てるけど。

・『アメリカン・パイ in ハレンチ教科書』American Pie Presents: The Book Of Love (2009)
 監督:ジョン・パッチ 脚本:デヴィッド・H・ステインバーグ
 破竹の勢いでアメリカン・パイシリーズを観ています。スピンオフ四作目。1に登場したバイブルが再登場。the book of loveをハレンチ教科書と訳す邦題は好き。再び登場人物を一新して、童貞卒業を目指す男子高校生三人組の話。全員キャラが薄いし魅力がない。名前も覚えられないレベル。単調な妄想パートがスベっている。下品で不謹慎なのはいつもの通りだが今回はそれすらも面白くなくて不快感が勝る。
 アメリカン・パイシリーズの魅力といえば個性豊かな、つい応援したくなってしまう登場人物、友人たちとの馬鹿騒ぎ、明るいエロ、奇抜でアホなアイデア、清々しいほどストレートな恋人や家族への愛などが挙げられるが、登場人物に魅力がなく、熱い友情もなければ、ついついほっこりしてしまうような絆もない。3以降あれだけ持ち上げといたスティフラーを今後に及んで急に薄っぺらい嫌なやつにするのもモヤモヤする。公式作品だけど、タイトルだけパクったパチモンかと思うほどつまらない。バターサンドやいつもの喫茶店など、申し訳程度のアメリカン・パイ要素は出てくるが、アメリカン・パイらしさが決定的に欠けている。1のような切実さや特別さがない印象を受けた。
 ジムのパパが出てきて、バイブルの修復作業に乗り出すくだりは、書物の成立過程を見ているようでわくわくする。余談だがアメリカン・パイばっかりみていたら童貞のアトリビュートとも言えるニキビがめちゃくちゃ増えた。

・『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』American Reunion (2012)
 監督:ジョン・ハーウィッツ/ヘイデン・シュロスバーグ
 脚本:ジョン・ハーウィッツ/ヘイデン・シュロスバーグ
 高校を卒業してから13年後に初めて開かれる同窓会!オリジナルキャストが大集結しているのが嬉しい。皆勤賞のジムのパパは勿論、ジム、ケヴィン、フィンチ、スティフラー、3では居なかったオズまで!ミッシェル、ヘザーやジェシカ、ナディアやシャーミネーターやMILFの二人組など、懐かしい面々が大集結してるだけでとても嬉しい。シャーミネーター大好きなので彼も同窓会に来て、シャーミネーターっぷりを発揮していたのが良かった。
 30歳も越えて、バカな童貞だった彼らも大人になり、落ち着いてるし、垢抜けている。ある者は結婚して、ある者は父になっている。必ずしも人生は思い通りにならず、なりたかった自分になれているとは限らず、楽しかった思い出は遠く、かつては許されたこともともすれば犯罪になる。変わった部分もありつつ、みんなでふざけて笑っている時の顔は全然変わってなくて良い。家庭生活や仕事や恋愛がうまくいっていてもいなくても、本人がそれに引け目を感じていたとしても、そんなことは関係なくて、楽しかった青年時代を共に過ごしたかけがえのない仲間として互いに尊重し讃えあっている姿に感極まるものがある。1,2に比べて3は少し微妙だと思っていたが、完結編である今作をみると、楽しいカス野郎が親愛なるour dickになるために、3も必要不可欠なアメリカン・パイシリーズの作品だったことがわかる。変わらない友情や、あの頃の特別だった人、共に生きてきた生涯の伴侶、大切な人たちや何度思い出しても笑える思い出が沢山ある彼ら彼女らは幸福だろう。

 時にはお節介なアドバイスをしたり、主にスピンオフ作品で尾鰭がつきまくったジムのお父さんがパーティで弾けるシーンがあるのも良い。長年連れ添った妻をなくして、思い出の中に生きようとする彼が、今度は息子のジムに諭されて今ここから新しい幸せを見つけようとし始めるのが感動的。

 誰もゲロを吐かなくなったが、いつも集まっては駄弁り、高校卒業時に、将来に乾杯した店で、再開することを約束に乾杯して終わるの良過ぎる。これ以上の完結編は考えられない。そして本シリーズの通奏低音をなすmother fuckで締めるの格好良い。3でも使われていて印象的だった女性を高らかに賛美するジェイムスのlaidが流れるのも良い。

・総評
 アメリカのお下劣コメディの名作と名高い『アメリカン・パイ』ですが、シリーズを通して変わらない魅力としては、思わず感情移入して応援したくなってしまう、個性豊かで魅力的なキャラクター達、楽しかった青春時代を想起させる男同士の熱い友情、女の子と上手に話せなかった頃に抱いていた切実な異性への憧れ、自分のことでいっぱいいっぱいだった主人公たちが、相手を思いやることを学び運命の人と出会っていく純愛物語、そして驚くほどストレートに表現された感動的な家族や身の回りの大切な人々に対する愛情によって、思いの丈を素直に伝えることの大切さ、回を重ねるごとに、ライフステージを上がっていき、その時々にぶつかりがちな人生の悩みを正面切って取り上げている点などが挙げられます。下品なネタや不謹慎な笑いのオンパレードなので、カップルで観るのはおすすめしにくいですが、もしもアメリカン・パイシリーズを一緒に笑って観ることができたら、ジムとミッシェルのように、末永く幸せに暮らしていくことができるかもしれません。最後まで読んでいただきありがとうございました。

・お知らせ
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