アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

有限

 最近、禅を学びはじめた。禅関係で一番有名な、鈴木大拙の本も読みながら、それが現在、どういうふうに理解され、どんなふうに消化されているのか、わかるような本も並行して読んでいる。マインドフルネスとか言われている、そういうやつ。ライフハックの記事や本を読むのは、バカにしたいような気持ちがありつつも結構好きだ。常に、生活をもっとよくしたいという気持ちを抱えているので。

 
 で、そういう禅の考え方やそれを申し訳程度に取り入れた生活態度やなんらかのメソッドを読んでいるうちに、僕はひねくれてるけど単純な性格なので頭がすっきりしてきた。どちらかといえば屈託マシマシ人間ではあるけど、日々頭に去来する心配や不安などの大部分は、認知の歪みからもたらされているという実感を得た。こういう素直なところ、いいと思う。
 
 自分の悩み事とかを、人生とか、社会とか世界とか、性格とか人格とか、そういうあらゆる混ぜるな危険ワードをふんだんにぶち込んでこねくり回す癖があるので、必要以上に怖がったり尻込みしたり自分を責めたりしているなあと気づいた。
 
 今日、大規模な部屋の整理をしていて、いらないものを捨てたり、まとめて片付け(押入れの奥に押し込んで目の前から消すこと)たりしているうちに、これまでのことを色々思い出して懐かしくなって寂しくなったりしているうちに、自分で自分の遺品整理をしているみたいだと思ってしまって精神が終わったんだけど、結局大事なものは何ひとつ捨ててないし、引越しに向けて部屋を片付けることに人生に関わるような大した意味はない。どうにか意味をひねり出すなら、部屋が綺麗になってよかった、くらいなものだ。
 
 つらいことや、暗いこと、悲しみやさみしさに対して病的なまでに敏感であることは、感性が豊かとか、感受性が鋭いとか言ったら聞こえはいいけど、それは単なる認知の歪みだ。こうやって断言するとそれはそれで別ベクトルの歪みであるような気もするけど、多分ポジティブもネガティブも同じくらい病的といえば病的なんだと思う。問いのあるところにしか答えはない、って禅の本に書いてあった。どんな二項対立も結局は便宜的なもので、二項対立で表せたり解決するような単純なことはほとんどない。自分の悩みって結局自分のからだや環境や生活から生まれるものだから、自分の習慣や生活を改善することでしか解決しなくて、まあなるべく気分良くいられたらいいよね。
 
 あと最近の大きな気づきとしては、時間は有限だってこと。命あるものはいずれ死ぬ、というようなことじゃなくて、まあそれはそうなんだけど、1日は24時間だってことに今日気づいた。今までわかってなかったから、これは大発見だった。例えば、今月に入ってから数えてみたら17冊本を買ったんだけど、そんなに読みきれるわけがない。漫画とか新書とかだったら1日足らずでさっさと読みきれるけど、小説とか思想書・学術書の類は1日じゃ到底無理だし、僕は読むのが遅いので一週間とか一ヶ月とか余裕でかかったりする。気分によって読む本を変えたり並行して何冊か読んだりするし、どうせいつかは読むから買わなくてもよかったとは思わないけど、1日が24時間しかなくて、その中で本を読む以外にも色々やらなくちゃいけないことがあるっていうことを全くわかっていなかった。
 生活に支障をきたさないように本を読める時間はせいぜい2〜6時間くらいのはずなんだけど、1日に30時間くらい本を読むつもりで本を買ったり読んだりしてたように思う。精神と時の部屋に住んでいるつもりだった。本に限らず何かに夢中になるといつもそうなっちゃう。もっとこう、計画性というか、自制心というか、1日のリズムやその日その日のスケジュールや身の丈に合わせて、好奇心とか知識欲みたいなものを調整できたらいいんだけど、無理に抑えようとすると途端に生きる気力を失ってしまうから難しい。
 これから少しずつ、時間をかける、ということを身につけていきたい。
 
   欲しい本をかたっぱしから買っていたら一週間も経たずに破産する。お金をやりくりする能力や、欲望を必要に応じて我慢したり先延ばしにしたりする能力がなかったらあっという間に身をもち崩すことは誰でもわかる。俺だってわかる。
だけどそれはお金に限った問題じゃない。時間だってそうだし、体力だってそうだし、やる気だってそうだし、頭の処理能力だって注意力だってそうだ。人間には限界がある。家にあるものを全部背負って歩くのは無理だし、この世にあるものを全部家に詰め込むのも不可能だ。選んだり捨てたりとりあえず仕舞っといたりしなきゃいけない。
  世の中には死ぬまでにとることができる食事の数を数えたりする人がいるらしいけど、そういうのも必要なんだろう。人が一生のうちで身につける教養とか興味関心の幅は25歳までに決まるとかいうけど、そうでもしなきゃやっていけないんだと思う。いらないものを捨てることはきっと必修科目なんだ。一度しっかりいるものといらないものを分けてみなきゃ。断捨離とかミニマリズムの本を読んでみようかな。と、また本を増やそうとする矛盾が生じました。バグが多いぜ。
 
 思ったより時間がかかることって、思ったより多いな。急がなきゃいけないことと、急ぐ必要のないことの見極めってむずかしい。