アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

あの子のことが好きなのは

昨日、今年初めての素麺を彼女と二人で食べた。揖保乃糸と迷ったんだけど、って言いながら彼女が安い素麺を買ってきた。僕はどっちでもいいよって思ったから、どっちでもいいよって言った。俺はあんまり食べ物の味がわからないから、安くても気にならないし、高かったら高かったで特別感があって嬉しいから、どっちでもよかった。人生は選択の連続だと言うけれど、どっちでもいいことって以外と多いよなって最近なんとなく思う。なんとなく思うだけだから、それ以上の広がりはないんだけど、少し心が軽くなる。

最近、大変なことも多いけど、社会って大変だね。大人って大変だね。とか言いながらでも、この子と一緒にご飯が食べられたら、他のことはどっちでもいいじゃんって思う。パンにジャムを塗ったり(僕はフルーツが食べられないので砂糖をぶっかけたりする)、魚を焼いたり、たまには餃子を一緒に作ったりとかできたら、それでいい。寝る前には100円で買った中古の文庫本や漫画を読んだり、旧作のレンタルビデオを観たりしてさ。3000円くらいの家庭用プラネタリウムとか買って、思い出した時に眺めたりさ。見通しが甘いって、誰かに怒られそうだな。

自分にはあんまり生命力がないということを再認識している。バイタリティ命みたいな業界ばかり見ていたからかもしれないけど、ホタル程度の生命力しか持っていないと感じる。涼しい季節になって、過ごしやすい気候になると外に現れて、暗くなると、少し光って、すぐにくたばる。久しぶりの友人に会ったりすると、元気?って聞かれる。元気じゃないよって言うと心配されるから、元気だよって答えるけど、別に元気ではない。今まで生きてきて元気だった時間は20%くらいで、80%の時間は元気がないまま過ごしてきた。だから元気じゃなくてもそれが普通だから心配しないでって言いたいけど、回りくどいから、元気だよって言う。元気じゃないといけないのかなって少し考える。ポジティブな人と、ネガティブな人。どちらがより多くの人に好かれるかといったら、それはポジティブな人なのは間違いないけど、僕がどちらが好きかと言われたら、ちょっと困る。元気はないけど、楽しいということが僕には結構ある。そういうささやかなぐっとくる瞬間が、突き詰めれば詩になるのでは、なんてことにぼんやり思い当たる。あの子のことが好きなのは、赤いタンバリンを上手に打つからじゃなくて、生命力が僕とちょうど同じくらいだからじゃないかな、ということをちょっと考えてる。