アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

 淀んでいる。くぐもっている。とうとう言い出せない何かがつっかえている。語りえぬものの前で、沈黙をすることもできずにいる。語りたいものがあるわけでもない。しゃべってしまえばお終いだ、という予感もある。少しだけ曇った眼で、「雨は降っているか」と頻りに尋ねる人が思い浮かぶ。その日はよく晴れていた。しかし雨が降っているのかもしれなかった。そんな気がしてこないこともなかった。

 

 毎日換気のために窓を開けて回っていると、必ず涼みに来る人と、変わり映えのしない会話をすること。今日はいい風が吹いていると言い合うことで、なんとなくお互いを讃え合うことになったような気持ちになることもある。時間をおいて窓を閉めるとその人は部屋に帰っていく。丸まった背中が風をいっぱいに蓄えた帆のように見える。後手を組んで歩いていく。

 

 人と話をしているうちにそれまで言語化していなかった考えや言葉がぽろぽろ出てくることがある。僕はそういう時を嬉しく思う。

 

 今は沈黙すること、目をそらすこと、誤魔化すこと、気晴らしをすることで、様々なものに耐え忍んでいる。しかしそれも長くは続かない。語りの言葉をいかに獲得するか。仮構ということにも関心がある。切れ切れの文章を書いてみる。