アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

毎日だな

 毎日緊張感を持って通勤するためにいつもZAZEN BOYSを聴いている。繰り返される諸行無常向井秀徳が言うのを毎朝4、5回は聞いている。僕は変拍子が多用される音楽は踊れないから好きじゃなかったけどザゼンを聴いているうちにその良さがわかるようになってきた。キメの緊張感が凄まじくて、とても素面では聴いておれずになんだかハイになってくる。その緊張感とそれを突き抜けた開放感や、とぐろを巻くようなリズムの気持ち良さというのは他では味わえない。ザゼンが合法でよかった。冷凍都市から猫町へ、というフレーズを頭に食い込ませたまま仕事を始める日々である。

 働いているとあんまり時間がないと言うが、時間がないことはない。しかし朝が早いので寝るのも早く、寝るのが早いとご飯を食べたりお風呂に入ったり明日の心の準備をしたりするのも早くなるため、帰ってきてからも気忙しい。それらの作業がひと段落した頃にはもう寝る時間が迫っているので、本腰を入れて何かに打ち込んだり集中して本を読んだりするのが難しい。僕は働いていると幻想文学というかその類の小説が読めなくなる。どれだけ美しいイメージに触れても12時間後には出勤しているのだと思うと気が萎えてしまう。

 

 それはさておき思ったよりも色々なことに慣れてくる。朝起きるのも電車に乗るのも働くのも世間話をするのにも慣れてくる。色々なことがなあなあになっていく。とりあえずやることやっているという意識があるのでどんどんなあなあになっていく。あれほど強烈だった嫌悪感や恐怖感もなあなあになっていく。ニュースも見ないしツイッターの議論も見ない。未来のことも考えない。最近かなり性格が良い。

 

 とはいえ本を読めない日が二日も続くと落ち着かないというか苛々してくる。なので疲れ切ってしまった日にもなんとか読めるような本を常備するようにしている。詩集や白水Uブックスが気兼ねなく買えるのは働いていて良かったと思う。ずっと川口晴美の詩を読んでいた。しかし最近はまた気分が変わってきて歌集が読みたい。現代短歌のいいところ、それはお気に入りの一首を覚えることができるところで、覚えた一首を口のなかで声にはせずに呟けばいつでもそれを味わうことができる。それはその時の気分に沿ったものであったり季節に合ったものだったり、自分の中でお守りになっているようなものだったり、気分を明るませるようなものだったり、頭から離れないものだったりと様々だが、なんというかイマジナリーフレンドのような楽しさと気安さがある。今年は月一冊か二冊くらいのペースで歌集も読んでいけたらいいと思う。歌集のいいところのもう一つは音楽のアルバムを聴くようにしてなんども読み直せるところで、何度も読むうちに良さがわかってくるものも当然ある。何度も読んで口ずさめるようになってようやく像を結ぶこともある。それは何かを、植物や何かを、育てるたのしさにどこか似ているような気がするが書きながらかなり的外れなような気もしてきたのでどちらとも言えないことにしておいてください。

 結局のところ僕は読書に限らずワンダーを求めていて、思いがけないことに出会うと生きているという感じがする。それはポエジーと言い換えてもいいかもしれないがよくわからない。成人しても穂村弘とかスピッツとかが好きなままだった。これからもそうな気がしてきた。

 

捨てられた獣は月へ泳ぎつき人は汚れるなんてできない / 雪舟えま