アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

読書

 最近ネットの通販で買った川口晴美の詩集『液晶区』を気に入っている。毎日労働から帰ってくると一編か二編ずつ頓服薬みたいにして読んでいる。川口晴美の詩は疲れた時にすっと染み込んでくる。くたびれた心やひび割れた皮膚に水のように流れ込んできて、乾いた喉を潤すような生き返るような心地とはまた違うけど、読み終わった後には隙間が補強されたような感じがする。

 あとは労働と労働の間にあるせかせかした自由時間には、いつから読んでいるのかもわからないがちびちび読んでいる小島信夫の『うるわしき日々』を読んでいる。小島信夫のおじいさんになってからの小説はとても面白い。大抵は連載小説で、突貫工事的に突き進み、話が前後したり、脱線に脱線を繰り化したり、同じ話が何度も出てきたりするのだが、それがなぜかたまらなく面白い。あっちを立てればこっちが立たず、というのが生活にはありがちなことだが、小島信夫はそれを描くのが上手い。長い年月をかけてあちこち傷んだ生活をせっせと立て直そうとするも、一つが解決しないうちに思いもしなかったところが破裂してしまう。筋らしい筋がない彼の小説の筋となるのはそういう部分なのだが、そうやってあくせくしているようで変にぼんやりしている。全然関係のないことについて考えていたりする。かと思うとそれがやはり関係していることになったかと思うとまた別の話が始まって何を読んでいたのかよくわからなくなる。そういうところが面白い。小説の自由を感じる。