アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

実家暮らし

 引っ越しを済ませてから、早いものでもう一週間が経とうとしている。引っ越しする直前の一週間は冷蔵庫もエアコンも扇風機もない部屋で過ごさなければならなかったのでとても長かった。人生観が変わるかと思った。

 実家に戻ると、今までは当たり前のようにやっていた、生活のためにしなければいけないことが、しなくても死なないことに格下げされて、その気になれば一日中何もしなくてもよくて、エアコンは効いていて涼しいし、実家に置きっぱなしにしていた漫画を久しぶりに読み返したりしていた。

 京都を離れる日が近づいてから、こんなに友達がいたのかと思うくらい遊んでくれる人が増えて楽しかった。実家に戻ってからも、早くも遊びに連れ出してくれる友達がいたり、お盆の時期の予定が埋まってきたり、飲みに行こうと誘ってくれる人がちらほらいたりして、実感としてはなんというか引っ越したら友達が増えた。

 引っ越してからの数日間は、人と会う予定もなかったし、毎日バカみたいに暑いだけで何事も起きないし、話す相手と言ったら両親くらいだったので、日に日に口数が減っていたけど、こうしてかまってくれそうな人たちがいるだけで、すこし体に力が入るというか、元気になる。それはそれとして夏バテはしている。

 

 僕は夏が好きなんだけど、今年の夏はあまり好きじゃない。暑いのは苦手じゃないけど、今年は暑すぎる。35度を超えたらそれはもう危険な暑さで、危険なものは好きじゃない。集中力も落ちるし。頭がぼんやりする。しかし思えば一年のうちの半分は頭がぼんやりしている気がする。もっとかもしれない。

 何を考えているのかわからない、と人に言われたことは何度もあって、ちょっと前までは自分なりにいろいろなことを考えていたけれど、最近はあんまり考えてない。何も考えなくなってから何を考えているのかわからないとも言われなくなった。何も考えていないのがばれてしまったのだろうか。

 

 一人暮らしではなくなって、以前ほど本を読み耽ったりインターネットをしたりしなくなったので、毎日の情報量が少なくなった。読んだ本といえば川上弘美のエッセイや細野晴臣のインタビュー集くらいで、ちっとも頭は働いていない。頭が働かなくても生きていける環境ってすごい。

 久しぶりに実家の本棚を見ると高校を卒業して出て行く前と比べて様変わりしていて、読みたい本が何冊もあるのでしばらくは自分で本を買わなくてもいいかもしれない。本棚が変わったということもあるけど約4年間を通じて自分の本の趣味や興味関心が変わったということもある。色褪せた本もあるし、枯れた味わいを帯びた本もあるし、思い入れがべっとり付着して気軽に近寄れない本もある。

 読書は趣味の中でコストパフォーマンスがいいのか悪いのか、わからない。もちろん一冊一冊はそんなに高くはないけど、僕は大学生活を通じて可処分所得の七割くらいを本に使ったと思う。引っ越しのときも大変だった。家電の運搬を伴わない引っ越しだったのでもしも本がなかったら車で一往復すれば済んだと思う。

 音楽は、物心をついた(14才)頃から趣味の一つで、今も生きている人間関係のほとんどは音楽を通じて知りあった人たちだ。一方で本をきっかけに仲良くなった人というのは、思い当たらない。だけど本を通じて仲が深まった人はいるのでいいや。本を読むことはひとりきりだということとどこかで結びついていて、だから僕は本を好きだと思う。

 

 今日は下鴨神社の古本市らしくて、羨ましい。古本市と御手洗祭と夏の夜の鴨川はすでに恋しくなっている。あっても頻繁には行かないけど、歩いていける距離に川があるのはやっぱりとてもこころよいことだった。

 

 それにしても実家で暑さにかまけてだらだらしていると、無職だという実感が半端じゃない。単位を取ったら、しっかり職探しをしようと決意を新たにしました。早いところ仕事を見つけて、免許を取ったりアルバイトをして遊んだりしたい。