アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

 ずっと読みたかったけれど絶版になっていて中古本もほとんど出回っていなかった大森静佳の歌集『てのひらを燃やす』が先月の末に復刊されていたらしい。たぶん最近第二歌集を出したり色々と活躍されているからだと思うけど、歌集が復刊されるのはとてもうれしい。詩歌のジャンルの本は、たいてい発行部数も少なく、強い関心がある人しか買わないので、ひとたび絶版になってしまうと、ほとんど古本市場にも出回らないし、あったとしてもめちゃめちゃに高騰していたりする。そんな中で、今回のように復刊されるのはめでたいことだと思う。

 ぼくは実作者でもないしそこまで熱心なウォッチャーじゃないけれど、近ごろ現代短歌がとても活気にあふれているように感じる。ぼくの体感では、2015年末に出た山田航の『桜前線開架宣言』から、2016年に文学ムック『たべるのがおそい』が始まったり、ユリイカで現代短歌の特集が組まれたりして、今年に入ってからも『短歌タイムカプセル』が出たり中澤系の歌集が何度目かの復刊をしたり、穂村弘が17年ぶりに歌集を出したり、この夏に新しいムック『ねむらない樹』がはじまったりと、短歌関連の明るいニュースをたびたび目にするようになった。

 あといつからかは明確にはわからないけど、全国の大学で短歌サークルが息を吹き返したり新しく出来たりということも増えているらしい。つまりここ数年ずっと若い人たちが新しく短歌界?に参入し続けているわけで、そのきっかけの一つにツイッターがあると思う。短歌は基本的に31文字なので、1ツイートに4つまで収まるわけで、ネットを通じて拡散しやすい。また、現代短歌をランダムにツイートするbotも結構な数存在していて、今までだったら国語の教科書とか俵万智とか寺山修司とか穂村弘くらいしかなかった現代短歌に出会うきっかけが増えて、また新しい歌を探しやすくもなったことがあると思う。それからさっき言った『桜前線開架宣言』が出てからは、たぶん初めての「現代短歌に興味を持った人が最初に買うべき一冊」になって、現代歌人シリーズや新鋭短歌シリーズが10年台に入ってから続々と刊行されていたこともあって、掘り進めることも容易になった。それまでは「いまどんな歌人がいるのか」を把握するのも難しかったし、歌集も手に入れにくかった。

 何はともあれ僕は現代短歌を読むのが好きなので、このままいつまでも元気であってほしい。引っ越す前に三月書房に行きたいな。