アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

ゼロから始める自炊生活

 
 高校を卒業するまで、僕はずっと実家にいた。家の手伝いといえば、風呂掃除とゴミ出し以外はまるでしなかった。体感としては自動で服が洗濯され、風呂が湧き、部屋が綺麗になり、日に三度美味しい食事が出てきた(お父さんお母さんありがとう)。
 大学進学を機に一人暮らしを始めたのだけど、もともとロックスターの破天荒な伝説(キース・ムーンシド・ヴィシャスがお気に入り)をネットで読むのが好きだったり、自制心や計画性がなくノーフューチャーで夢見がちな性格だったため、生活や健康は退屈でダサいと決め込み、たまの飲み会や友達との外食以外は、チンするだけだったりお湯を入れるだけのレトルトのカレーやカップ麺、または菓子パンやカロリーメイト、そしてお金がない時はケチャップを吸ってタバコを野菜スティックだと思い込むことで生き延びていた。
 そんな日々を続けているうちにお金が続かなくなったり、不眠がちになったり、気圧に弱くなったり、指が曲がらなくなったり、とにかく体調が、というか心身ともに不安定になっていたのと、もう成人してるしぼちぼちちゃんとしなきゃと思ったのと、軽い筋トレを始めて筋トレには食事が大事と知ったこととか、色々重なって自炊を始めてみようと思った。何より、自炊をマスターすれば外食するよりもはるかに食費が安く済み、食費が安くなればかかるお金が少なくなり、かかるお金が少なくなればどこにどう住むとしても根本的な生存確率が上がる、と思い当たったからだ。
 
 そんなこんなで今では毎日自炊をするようになった。学校がある日はもちろん、日付が変わりそうな時間に疲れてバイトから帰ってきても、ご飯を作って食べることができるようになった。ご飯を食べないと寝られないことに気がついてから、どんな時もご飯を食べるように気をつけている。たくさん食べる、というのは生命力の象徴だ。僕は家で昼ご飯を作りたい気持ちが余って、可能な限り午前中に授業を入れないように時間割を組んだ。だけどこれは大学生だからできる特権的な振る舞いなので、ゆくゆくはお弁当を作れるようになりたい。そのために大切なのはきっと作り置き、常備菜、既存の安価なレトルト食品や冷凍食品をいかに活用するかだと睨んでいる。主食に関しては、兄が教えてくれた玄米、押し麦、大豆を混ぜた「最強飯」が良さそう。↓
 
・自炊をするために何が必要か
 ここからは、僕のようにまったくのゼロから自炊生活を始めるにあたって、必要なものや心構えについて僕なりに書いていきます。なんでこんなことを書くのかというと、自分のための忘備録にもなるし、無理なく持続可能な自炊のシステムを作ることに興味があるのと、情報共有というか、オープンソース的な雰囲気って素敵じゃんと思うからです。自炊に関するノウハウ、どんどんシェアして食卓を豊かにしていきましょう。
 
・必要な設備
 コンロ(IHでもガスでも)
 炊飯器(三合も炊けたら十分)
 電子レンジ
 冷蔵庫
 包丁・まな板
 鍋、フライパン(蓋つきだと便利)
 菜箸、おたま、大さじ
 計量カップ(500ml)
 シリコンスチーマー
 ざるとボウル(あると便利)
 だいたいはどこの家庭にもあるかと思いますが、なかったら買うべきです。包丁はセラミックのものがオススメです。錆びないし切れ味が落ちないので手入れが要らなくて楽チンです。ただあんまりかたいもの(かぼちゃとか)を切ると刃が欠けて買い換えなきゃいけなくなるので注意が必要です。野菜とか肉くらいならサクサク切れます。サクサク切れないと料理が一気にめんどくさくなるので包丁は大事です。まな板はぺらぺらのものよりもある程度厚みのあるものの方が使いやすいし洗いやすいと個人的には思います。百均で包丁とまな板を一緒に立てられるスタンドが売ってるのでそれを買って置いておくとと乾かすのも使うのも楽です。
 一人暮らしの狭いアパートで自炊する際に立ちはだかる大きな壁の代表は、コンロが一口しかないこと、だと思います。コンロが一口しかないと、パスタを作るのも一苦労です。麺を先に茹でると食べる頃にはカピカピし出すし、ソースを先にすれば冷めたソースをパスタにかけることになります。パスタは簡単、誰でも作れる自炊の基本というふうによく言われますがそうでもないと思います。一口のコンロでパスタはとてもだるいしめんどくさい。あと関係ないですが誰でもできると言われているコンビニのバイトが実は覚えること多い上にある程度の機転や俊敏さ、接客スキルが必要なハードルが高いバイトであることにも違和感を感じます。
 また、理想的な食事として「一汁、三菜」というのがありますが、これも困難です。一口コンロでは、一汁作るのでいっぱいいっぱいで、そのまま行くとゼロ菜です。現実的なことを言えば、丼モノとかカレーだとかの一品料理を作って食べることが増えると思います。
 そこで登場するのがシリコンスチーマーと電子レンジです。具材を切って調味料を入れてチンするだけで、実に多彩な料理が完成します。電子レンジでおかずを作れたらコンロで味噌汁を作ることもできます。またはコンロでおかずを作ってスチーマーでもう一品的な小鉢を作るのもいいでしょう。僕が思うに、ハードルの低い持続可能な自炊生活を続ける鍵はシリコンスチーマーです。シリコンスチーマーで作れるレシピ集、みたいな本が手元にあると楽しくなるのでオススメです。僕が使ってるのは豊口裕子の『電子レンジ シリコンスチーマーでごちそうレシピ100』です。サケのチャンチャン焼き、豆腐とキノコのうま煮、蒸し野菜、なすのポン酢煮、レンコンの煮なますなどをよく作ります。ちなみに、本当に100個載ってます。あとこの本でポイントが高いのは、「そんな調味料、普通の家にはねーよ!」と言いたくなるような飛び道具を使わないレシピが多いことです。

 

電子レンジ シリコンスチーマーで ごちそうレシピ100

電子レンジ シリコンスチーマーで ごちそうレシピ100

 

 

 僕はまだ試してないですが、炊飯器を調理器具の一つと捉えてバリバリやる方法もあるみたいです。この記事に詳しい。↓
 
・必要な心構え
 便利な道具やレシピは使え
 ハードルを下げろ
 丸腰で立ち向かおうと思うな
 この三つは大事です。自炊をするとなると、せっかくなら料理上手になりたい、おしゃれな料理を作りたい、などの雑念が湧いてきます。が、突然自分を根気もセンスも技術もあるスーパーマンだと錯覚するのはやめたほうがいいです。くだらないプライドはまずい料理とやる気の消失に直結します。目分量で味見しながら味を整えていくやり方も、初めのうちはやめたほうがいいです。慣れないうちはレシピを守って理科の実験めいた作り方をした方がおいしいものができて、モチベーションが上がります。大さじで調味料を量って入れるを繰り返しているうちに、「大さじ一杯の醤油の量はこんなもん」というのが体感としてわかるようになってくるので、目分量であれこれするのはそれからでも遅くないと思います。
 また、電子レンジや炊飯器で料理をするというと、そんなの自炊じゃないやいと思う向きもあるかと思いますが、食えりゃいいんです。何よりも大事なのは食べること、そして続けることです。あと買い物のときに底値にこだわりすぎるのも良くないです。なぜならめんどくさいからです。
 それと、生活という強敵に丸腰で立ち向かおうと思ってはいけません。へとへとに疲れたり、どうしても料理をする気になれなかったり、お腹と背中がくっついて今すぐ何か食べないとやってられない、という日はどうしたってあります。今までだって数限りなくあったのだから、これからだってあります。そういう日も何とかご飯を食べるためにご飯を冷凍しておいたり、100円ローソンで冷凍食品(ぼくは餃子と唐揚げ)を買っておいたり、サッポロ一番を常備していたりします。ちなみにごはんを冷凍するのは茶碗一杯分ずつ、ラップに包んで冷凍するのがいいです。タッパーなどに入れるよりも解凍が楽です。茶碗一杯分だと500Wで5分くらいでチンするとホカホカになります。なるべく楽に、なるべく早くご飯が用意できる仕組みを自分なりに整えておくこと、大事です。
 また、地味にめんどくさくて最初のうちに一番わからないことは、スーパーでの買い出しです。一体何を、どれくらい買えばいいのか。さっぱりわかりませんでした。長きにわたる試行錯誤の末、自分なりの「冷蔵庫に常備しておく食材リスト」が出来上がってからは、スーパーに行くのが楽しくなりました。また、さっき似たようなことを書きましたが、レシピを調べて作ろうと思ったとき、必要な調味料が家になかったとき、急激に萎えます。そんな経験をこれまた何度も繰り返して、最低限必要な調味料についてもわかってきたので、いつも家に置いておくべき食材、調味料のリストや、冷蔵庫の中身の回し方について、また今度書こうと思います。もちろん、それを頑なに死守する必要はなくて、食べたいもの、作りたいものがあればそれも買えばいいです。ただ、毎日毎日「食べたいもの」基準で献立をひねり出すのは大変な作業です。なのである程度ルーチン化してしまったり、冷蔵庫の中身や栄養の面から献立を組み立てたりする術を身につけることは自炊をつづけるために、とても大事なことだと思います。
 今回は、なんだかすごくブログらしい記事を書いてしまった。