アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

鍋のようだ

 生活っていそがしい。今年から、生活というものを意識してちゃんとやろうとしてきたのだけど、そうすると季節の移り変わりが身にしみてわかるようになった。今週は冬将軍がやってきて秋を惨殺して街をすっかり冬に変えてしまったけど、スーパーに行くだけでもそのことがよくわかる。スーパーで並んでいる野菜の顔ぶれが変わった。今ではすっかり大根、白菜、レンコン、ごぼう、キノコ類がでかい顔をして棚にどかっと並んでいる。夏と同じような食材を買おうとすると夏のときよりもはるかに高くなる。生活をするようになってから初めての冬なので、冬の食材の調理方法がいまいちわからない。特にごぼう。なんだあれは。長すぎる。

 よしながふみの『きのう何食べた?』を一月一冊くらいのペースでちまちま買って読んでるんだけど、その中に出てくるけんちん汁と、炊き込み御飯が冬の食材をたくさん使ってて美味しそうだから、近々真似してみるつもり。この漫画の筧史朗と佳代子さんの、特売情報や食べきれない食材をシェアする関係性が素敵。

 それから、人参、キャベツ、じゃがいもあたりは、一年を通してほとんど値段が変わらずに安く手に入るからやっぱり偉い。特にキャベツは量も多いし、キャベツをものにしたら、自炊生活はかなり安く、快適になるんじゃないかという予感がある。だからキャベツの調理法をなるべくたくさん身につけたくて、ほぼ日刊イトイ新聞・編『がんばれ自炊くん!』の「キャベツで生き延びよ!」のコーナーを熟読している。キャベツ一玉がまるまる冷蔵庫に居るときの対処法がたくさん書かれていておもしろい。

 あとは吉田戦車の『逃避めし』もおもしろい。ものぐさだけど絶妙にそれっぽい、冷蔵庫にあるものでなんとか様になるようなものを作ろうとするハードルの低さがとてもよい。

 なんとなくこの連載は、小さい人や若い人に読んでもらいたいような気持ちが常にありました。
 適当でいいから、基本さえおさえれば、自分の身を養うシンプルな食事は自分でまかなえる。こんな程度のものでいいんだよ、と。
 自分の子供へのメッセージでもあったかもしれません。
 今赤ん坊がいるわけですが、10年後には10歳になります。
 その時にたとえば親の留守中、一人で冷や飯に味噌汁をかけて一食とすることができるような「食う力」を身につけてくれたら、どれほど安心なことでしょうか。 

吉田戦車『逃避めし』あとがき

  食は生きる上での楽しみの一つかもしれないけれど、楽しみだろうがめんどくさかろうが毎日なにかを食べなければいけないわけで、生きてる限り食事はし続けるわけだから、まず「食う力」を養うことがいまの僕の目標。「食う力」には興味津々だけど僕はもともとあんまり食に関心がないので、施川ユウキの『鬱ごはん』はいちいち共感しながら楽しく読めました。あとフランス人の適当な食事情の話とかも好き。

 細野晴臣の『HOSONO百景』を読んで、この人は食事をとるみたいに音楽を聴いて、料理をするように音楽を作るんだなあと思いました。あのごった煮感は、クセになる。

 

 季節が変われば暮らしが変わるみたいな話にしたかったけどぐちゃぐちゃして終わりました。それはそれで鍋みたいでいいかなと思います。冬だし。