アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

日記

どんな内容でも、文章を書くとスッキリする。もやもやがほんの少しだけ晴れるというか、自分の考えていることにちょっとした居場所が与えられるような感じがする。だから今日も日記っぽいことを書いてみる。今日1日のこととか、最近お気に入りの漫画とか、映画のことを。

小気味のいい漫画を読んだり、僕の部屋の小さなテレビに映るジェームズ・ディーンなんかを眺めていると、自分がほんの少しだけ特別になれるような気がする。自己実現だとか、かけがえのない自分だとかの思想が、骨の髄まで浸透している僕は、慎ましやかな生活だけでは息ができない。だから今日も散歩に出かけて、コーヒーを飲んで、雑誌の『ポパイ』を買ったりなんかしていた。「二十歳のとき、何をしていたか?」って特集で、読み応えがあって面白い。そういえば今日行った喫茶店には、レコードがたくさんたくさんあって、細野晴臣が好きだっていう話をしたら、店主さんが『HOSONO HOUSE』を流してくれたりなんかして、コーヒーも美味しくて、タバコを一本だけ吸って、すごく良い時間だった。

最近読んだ漫画の、『春と盆暗』がすごく良かった。宮沢賢治の『春と修羅』をもじったっぽいタイトルが可愛らしい。タイトル通りのボンクラ男子と、ちょっとずれた女の子が織りなすボーイ・ミーツ・ガールの短編集なんだけれど、少しずつはみ出た心と心が触れ合う様子の描き方がとってもポップで大胆で、綺麗だった。心に春の風が吹き込むような展開は、ボーイ・ミーツ・世界とでもいうような爽やかさがある。映画でも観に行きましょうって言って観るのがキューブリックの『2001年宇宙の旅』のリバイバル上映だったりして、サブカルチャーにどっぷり浸かった層への目配せも随所にあるんだけど、全体的にはあくまでも軽くまとまっていて、どんな人にもお勧めできる良い漫画だと思う。
あと映画の『理由なき反抗』も最近初めて観たんだけど、今では珍しいシネマスコープの横長の画面で、それを生かしたキメキメの構図の数々がロマンチックで格好良かった。特にヒロインがチキンレースの開始の合図をして飛び上がり、その両横を猛スピードで二台の車が走り抜けるシーン、あれはシネマスコープでしか撮れないんだろうな。それと映画史に残る名衣装、ジェームズ・ディーンのジーパンに白シャツ、赤いブルゾンの格好良さ。『理由なき反抗』ってタイトルだけど、反抗するのにはちゃんとした理由があるし、彼がラッパ飲みするのは瓶の牛乳だし、隙あらばやたらとゴロゴロしまくるディーンはちょっとチャーミングですごく格好良かった。機能不全の家族の枠組みから抜け出して、ボロボロの広い空き家にガールフレンドと友達と三人で転がり込んで、探検したりまたゴロゴロして戯れたりする後半のシーンは、がっしりとした体格とは対照的にどこまでも無垢で、綺麗だった。余談だけど、つい最近公開された『ラ・ラ・ランド』で、主人公たちがこの『理由なき反抗』のリバイバル上映を見に行くシーンがあるらしい。この映画を見たら、誰だってグリフィス天文台プラネタリウムが観に行きたくなるだろうな。
相変わらず微熱が出続けてるけど、こんなにゆっくりできたのは久しぶりで、なんとなく嬉しい。三月になったら、就職活動が始まる。僕も始める。まだ何者でもない僕が何者かになるための数ヶ月が始まる。ちょっと怖いし緊張もする。これから、どんな人になっていこうか。