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アワー・ミュージック

正しいヒマの過ごし方。楽しいお金の使い方。

”ジャズな書き方”試論

壊してね 壊してね こうやって作るんよ
壊してね 壊してね こうやって作るんよ
せやけどね 戻らんよ 壊したもんは戻らんよ
別物や 別物や 全くもっての別物や


ミドリ (Midori) - ちはるの恋

 

 
ジャズには、テーマと呼ばれるメロディがあって、決められたコード進行の枠組みの中で、即興演奏(アドリブ)が行なわれる。ジャズを聴く楽しみの一つには、演奏者がテーマのメロディやリズムを崩して、壊して、作り替えるそのスリリングさがある。最初に一度テーマがきちんと演奏された後は、テーマは演奏によって殺され、もう一度生まれる。よく言われることだが、ジャズには一つとして同じ演奏はないのである。だからこの人のこの曲が好きではなく、この人のこの場所、この時の演奏が好きといった語られ方をされる。同じ演奏者が同じ曲を演奏したとしても、出来映えはまったく異なる。ある時は、まるで翼が生えたかのようにすばらしいフレーズを連発し、このままどこまでもいってしまうのではないかと思えるような熱い演奏をしたかと思うと、ある時はほとんどテーマのメロディや常套句的なフレーズからはみ出せず、窮死してしまうような演奏をする時もある。
そのような一回性、スリリングさを持った、想像力の生まれる場所、それがジャズである。
ジャズはどこまでいけるかわからない。だけど行けるところまで行ってみよう。そんな能天気でストイックな、場当たり的な楽しさがある。
 
タモリが夜タモリという番組の中で、”ジャズな人”について言及したことがある。

ジャズな人ってのは、向上心がないんだよね。誤解されたら困るけど、向上心がある人は「今日」が「明日」のためにあるんだよ。向上心が無い人は「今日」は「今日」のためにあるわけだ。これがジャズの人よね。向上心=邪念てことだよね。

 

行き当たりばったりで、目の前のことを、好きなようにやる。目先の用事がぜんぶなくなってしまったら、その都度またどこかから探し出してくる。タモリは、「人生は用事の積み重ねだ」とどこか別のところで言っていた。

 

僕は、ぼんやりとだが、”ジャズな文芸批評”というものを目指している。ある本を読んで、ある文章に心惹かれる。それを書き取る。そしてしばらく考え事をする。そうして出てきてきた言葉は、僕のものというよりも、その本によって考えさせられたもの、その本の内容の変奏曲とでも言うようなものだろう。僕はそれでいいと思う。ある本の内容をテーマとして、僕が即興演奏をするのだ。行けるところまで行っちまえばいい。どこにも行けなくたっていい。書いている間は、確かなリズムが、躍動が、生命が感じられるのならば。それを読んで、誰かがまた違うことを考える。そうやって、緩やかになにかの律動が、広がっていけばいいと思う。
 
ゴダールもそうだ。彼もまるで即興演奏をするかのように、目の前に広がる世界を、カメラを通して変奏する。だから彼の映画は、あらかじめ決められた筋書きなんてないかのようなスリリングさがある。彼についてはもう少し考えがまとまったらまたじっくり書いてみたいと思う。