アワー・ミュージック

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ジュリアン・グリーン『アシジの聖フランチェスコ』

映画『ゴダールのマリア』で、主人公が読んでいたのが気になって、学校の図書館で借りて読んだ本。

アシジの聖フランチェスコは、13世紀の人で、教会の権力化に伴う腐敗がすすむ中、聖書の言葉を信じて祈り、語り、行動をして、生きた実在の人物で、聖人とされていて、早すぎた福音主義者だとか、第二のイエス・キリストだとか言われている。

この本は、著者ジュリアン・グリーンが、聖フランチェスコの生涯を、著者がさまざまな記録を比較・検討しながら、熱意を持って、愛を込めて、慎重に、史実に忠実に、素朴な言葉で、美しく描いたものである。

 

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 アシジの聖フランチェスコ

フランチェスコは、神様を信じた。神様を、キリストを、神様やキリストの言葉である聖書を深く信じた。そして、こよなく愛した。

彼は、裕福な家庭に生まれ、才能にも恵まれ、何一つ不自由のない少年時代を過ごした。そして青年時代には、お金をたくさん使って、贅沢の限りを尽くして遊び回った。やがて当時の流行であった騎士道精神に感化され、騎士を夢見るようになり、挫折し、また放蕩の限りを尽くした。彼はその生活を心の底から、全身で謳歌していた。その徹底した駄目っぷりは読んでいて心楽しく、彼の気持ちの一つ一つがよくわかった。聖人とて、生まれたときから立派であったわけではないと思うと、おかしかった。

様々な原因や偶然が重なり、やがてフランチェスコは改心し、神の道を歩むようになる。彼は神を、神の言葉を深く信じるようになった。それから、彼の生涯は、神と共にあることに捧げられた。

その後の彼は、聖書にもある「清貧・貞潔・服従」をモットーに、それまでの富すべてを捨てて、その後の生涯を通じて世界を放浪する。彼は、己の肉体と、神の言葉と、愛以外は、何も所有しなかった。彼は祈り、語り、物乞いをし、歌い、神の恵みを歓んだ。やがてそんな彼を見た人々が仲間に加わり、兄弟会となっていくのだが、彼らのひたすらわかち合い、祈り、そして歓ぶという姿勢は彼の死の際まで一貫していた。

フランチェスコは愛の人である。隣人への愛、自然の美しさへの愛、神への愛、そして神が造りたもうたこの世界への愛。愛をもって、彼はこの世の全てを歓んだ。その素朴な美しさに、読んでいて強く心を打たれた。All You Need Is Loveっていう噂は、本当かもしれないなんて思った。